アナザードライブ/ねことら
 
ことはないのに。あるいは、ぼくたちはぼくたちの何度目かの生まれかわりかもしれなかった。


空想。たとえばみんな幸福でいてほしい。たとえばみんな死なないでほしい。たとえばだれも涙を流さないでほしい。長い長い直線道路を一列に並んで等速で走る。そこには健全な生活がある。定周期の音楽がある。いつかそれでも背後から冷たい金属のハンマーが虫のように僕たちをころすだろう。僕たちは、それでも世界の果てが滝つぼにすいこまれることを忘れたふりして等速で走る。その努力を続ける。できる限り。


削ぎ落された影たちの堆積を地面として、いつか薄いカーテンを開けるだろう。そこにあるのは明度の高いホワイトの洪水だ
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