アナザードライブ/ねことら
 
行くときは人目を忍び夜を選んで集積場まで走った。保存食ばかりを食べて暮らした。蝙蝠はくらやみに擬態する。ぼくたちは夜を食べ、夜をのみ、夜を排泄する蝙蝠だった。深海をとぶ毛の生えたさかなだった。


きみのことが好きなのか嫌いなのか、たまによくわからなくなる。それ以上に、このせかいのことが好きなのか嫌いなのか、わからなくなることがよくある。同音意義と同語反復。鏡の中で手を振れば鏡の中の像が手を振り返す。ぼくたちは、いつもさみしがっていた。青い肺で酸素の数パーセントを分け合ったり、瞳の虹彩のなかに三日月の短い弧を探そうとしたりした。薄い銀の硬貨をいちまいいちまい積重ねても、どこにもたどりつくこと
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