アナザードライブ/ねことら
に隠した。毎月口座に降りこまれるわずかな生活費をきりつめて、ある月は君の好きな観葉植物を買った。ドラセナ、モンステラ、シマトネリコ、ポトス、いつか枯れ果ててしまう背の低い緑に囲まれて。ここは深海であって密林でもあった。すべては限られた6畳のなかのちいさな秘境のものがたりだ。
鍵はそれぞれに手わたされていた。ロッカーの鍵。宝箱の鍵。教室の鍵。ドアの鍵。朝は開かれることを待ち、目を閉じて清潔な死体のようにナンバーがふられて並んでいた。どのタイミングではじめてもよかった。怖気づいていただけだ。そうして冷たい火にあぶられるように、次第次第ぼくたちはするどくなった。鍵を捨て始めた。ゴミを捨てに行く
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