ビリジアン/水町綜助
 
かに月が
そのことに
関わっている
ゆびさきで
撫でるように
光を流して
俺が

動物たち
深い緑に跳ね回って
湿度を
水滴として
毛先にともらす
うさぎは泣いて
虎は猿の首を裂き
開いたのど笛からは
高音域の風が吹いて
シバリングが鬱蒼とした
樹々の葉先をちいさくふるわせている
あの一頭のうつくしく
かよわい牝鹿は
木立のなか
目線が交わっただけの牡鹿に
わけもわからないまま
犯された
それは何夜も続けられている
さわぎのつづく夜の森のなか
誰からも知られない
静かに狂った出来事として

牝鹿はそれ以来というもの
牡鹿を愛し
牡鹿も
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