ホームステイ/北村 守通
 
。彼女は黙ったままだった。彼女の表情は変わることがなかった。その視線は別に私を捉えている、という様子でもなかった。その視線の先になにがあるのか、何度かその方向を振り向いて確認もしてみたのだが、それらもまた失敗に終わった。ただ、彼女の関心は私にはないのではないか、と私は確証なき確信を持つようになっていた。
 そういったわけで、いつどこでか分からないうちに、誰とも知らない同居人と生活するようになっていたのだが、これが少しばかり不自由なことなのだ、ということに徐々に気付くようになった。入浴中にも風呂場の鏡に映ってきているし、あるときにはジーンズショップの試着室の鏡にも映っていた。車を運転しているときな
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