リルケを買いに…/折口也
薄雲る空のおかげで
暑さもほどよい今日の昼下がりに
僕はリルケを買いにくり出した
風はゆるやかに吹いて
立ち枯れる紫陽花の儚さに
詩のような匂いを吸いながら
夏は光の浸透を細やかに
そして、速やかに世界を染め上げる
こぼれ落ちる一滴の汗にも
可視光の色彩をばらまいて
息づかいさえも コーダを演出させる
リルケの詩を
正直、そんなに知っているわけじゃない
ただ彼の遺した言葉を盗みたかった
彼の詩に指紋をつけたかった
鋭利な彼の骨に刺されて
もがきたかった
慣れ親しんだ書店に並ぶ
若葉や古木の森の中に
しかし、僕はリル
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)