音のない洞窟( マレーシア到着編)/吉岡ペペロ
 

クアラルンプールからまたさらに飛行機で2時間半揺られて現着したときにはもう夜の10時になっていた

お客さんたちも少々疲れている

シンゴたち一行が空港から出ると小雨が降りはじめた

きつい排気ガスの臭いがする

それが湿度と混じりあって息ぐるしかった

バスの窓から人気のない暗い町並みを見つめた

水上生活者たちの暮らす明かりが河に花火の色で滲んでいた

なんど口に出してみても覚えられない工業団地近くの三ツ星ホテルに泊まることになっていた

ホテルの名前すら覚えられない

気乗りのしない仕事だからだろうか

いやちがう

日程表を見ながらでしかシンゴは今自分がどこにいるのかが分からなかった


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