愛の夏ーとあるあいすべき捨て鉢猫への想い/水町綜助
ふるえかたが音で
俺に聞こえた
天井の夜は
みるみるうちに
ひらかれているのに
それをふたり、
くぱあっ、て
二本指でひわいにひらいてあそんで
くぱあって
よけいひらいて
くりかえし笑う
声が止まって
息が聞こえて
空気がちかづいて
粘膜がふれて
それがいつかかならず
はなれることをしってる
だからかな
「不幸にしてくれる?」ってつぶやいた
目が覚めるくらいに
恋の前衛たる言葉っすね
めまいがおきそうだ
耳の奥、こだまする蝉の声
この壊れた
車の
(何かの比喩じゃなくて)
ドアの隙間から
ゆるくうねって
耳に流れ込んで
森を膨らませ
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