観覧車/長押 新
死ぬ瞬間が見れたのに!拳をぎゅうと握り絞める。握り絞めた拳が微かに揺れた。顔が火照る程の嫉妬の情が拳を震わせていたのだった。
妹は細い声で空の観覧車について不思議だと言う。不思議なのは其処から伸びたロープだ。ロープから伸びた体だ。私と妹とは、一股に山を二三越えるかの如く走った。窪んだ砂利道から草原へ出ると、枯れた草がまだ浅い色をして、金色にも見える。まるで造花だ。観覧車からロープを首に括った体が激しく、けれども痛みも見えずにゆらゆら揺れている。妹の喘鳴が響くばかりで風の音も無い。非道く残忍だった自分の考えに興ざめしたためか、真下に向かう足を緩めた。黒塗りの体が揺れるのが光に因って尚はっきり浮かび
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