観覧車/長押 新
 
かび上がり、滴る体液が高く落ちて来る。男の中には消化されないまま残った飯が詰まっている。私は眺めていた。男の腹を。
彼の腕が指先から降り落ちる。全身が痺れる。振り子の様に揺れる彼が、ちぎれ契れに降っている。男は回転しながら、注がれる。彼の腕が土器色だったのが、網膜にへばり付いて拭えない。空にへばりついている太陽。故郷、其れから腐葉土に似た臭いがする。湿り気の無い草原の中、妹の腕を掴み引っ張るように走る。飛び散る。その度、地面から飛び上がる。まるで自分が死ぬ様な、悪寒が止まらない。私と妹が走っている。太陽のせいか黒々とした私達。中身が散らばった体がいそいそと土に成り、土が波を打つ。波に足を取られ、転倒する。口の中に入った粒が騒がしく弾ける。そうして私の故郷が、振り返る。観覧車にはロープしかない。男の熟れて歪んだ顔を見た時、痛みが起こった。
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