リストカットマミー/
 
 三時五十分の角を抜けて、横浜の白塗りを思い出しながら、三歩進む、唾は頤から天に上る、喧騒は耳鳴りのかたちで映されまた描かれ、きみが網膜を着ていようといまいと、忌々しい素振りで、彼女は手首を切り取っている/万歳!を三度ばかり繰り返して、三度まで繰り返して、架空の都市の血流が敗血病に犯されるさなかに、彼女は包帯を巻いている、真新しい傷跡が幾重にも重なって、叙事されていく、心はそこにはなかった、心は、彼女の握り締めた刃渡り一枚辺り十五,四センチ(二百十四円也)の付け替え刃の切っ先に、皮膚と皮膜を新たに鎖した刹那に、鼓動にあった/塗り替えられた傷跡に、書き加えられた傷跡に、挿し込まれた傷跡に、心はなかっ
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