リストカットマミー/
 
かった、彼女が駆け下りていく、きみが追いかけていく、時計屋のてんでばらばらに(別宇宙の針を眺めながら)張り巡らされたものたちがいっせいに鳴り出す石畳の上を、きみが駆け巡る、欠けながら、欠き連ねられた虫の血液が、ひとの顔になって、壁面から、四隣から、空から、きみの汗から、すべてを、言い続けていて、それよりもまず彼女の手首に書かれていた「一」が気になって、一センチごとに拡大されていく手首を、ポリゴンを、きみは追い欠けていく、太陽が明滅する五本の指が蠕動する、かなしみは並行する鼓膜は幻妄する、きみは、地球儀ホメオパシー臍、その三つを握りしめたまま、欠けている、彼女はきりきりと笑い声を上げながら、恋人を、
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