殺りく愛/しもつき七
夜が、すこしずつ狭くなるから、
あなたを何度でも定義しないといけなくなる。からだを起こす
ごとの死。好きなんて、いわないでほしい。
「いやらしいことを、一度、二度、したから私たち愛で関係してい
るなんて、おもってないよ、密度がちがったね、それから音程も、
あってなかった」
あらゆる前日が立っている。ひからびた川のへりを、月があぶりだ
して絶対にかがやかない。湿った額の静謐さ。手をかける首のたよ
りなさ。充血。完熟。たりない。ない。
きらめく、たしかな質量をもった水の、楕円上にかさなって、ひと
つの体温の低くなるのをとても感じる。赤い。宛てがっ
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