殺りく愛/しもつき七
 
がった肌の面積
がそのときなにより明白な、血だった。歌う口。聞かない耳。曲線
だけで構成された体のいっとう奥を見たかった。見た。夜だった。


濁流
いらないいらないいらないものが、夥しいね、意味、ひとつだけあ
たえて、それ以外ぜんぶ放棄したい、だいじなことを解りたい、空
が翳るまでまみれたい、この水、あなたの、



川は水かさを増す。類いまれなる赤さを保ちながら、はみださない
ように、死んだみたいに凪いでいる夜のたもとに沿って。いつかね
じれた時間軸の、どこかで再び会って別れる。
そのための。


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