砂壁赤色矮星/
 
 二進数のボールペンを壁に突き刺して男は唸り続けていた。
 網笠を被り書こうとした想い人の名を「まままままままままままままま」で消し去る。漆喰の、ユーラシア、ベツヘレムが蜃気楼する。吐息は荒くはない、男が伸ばした手が三本と、男根に打ち付けられた釘の痕が赤黒く光って、電柱に晒された子供の目玉に似ていた。男は隔絶していた。啄木鳥のように打ち付ける蛍光ペンは隣家の住人の自慰行為を阻害し、至らしめた。纏綿目玉。男は夜の色の目玉をしていた、蚕の用済みが烈河増に累々し、少年がそれを見る。その瞬間の瞳だった、「なななななな」と幼き日の彼は繰り返していた、とすればそれは? と階段を降りてから彼は言ったのだ、おれ
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