手の届く所に星の光はある/殿岡秀秋
ソファーの模様が動く
ぼくは向かいのソファに座って人を待っている
周囲を見ても
動かしているものはない
中に軟体動物でも潜んでいるのだろうか
いくら見つめなおしても
模様が左右に動く
ソファが歩くわけではない
模様だけが
鮮やかな毛虫のように
ぼくの目の錯覚なのだろうか
中学校の校庭で生徒を並ばせて校長の長話
秋の空をみると
銀色に光るカプセルのようなものが
小刻みにうごく
飛行機雲がないので
ジェット機ではない
プロペラが見えないので
へリコプターではない
では何か
隣の男子に声をかけようかとおもうが
周囲を教師が監視している
いったいなんだろ
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