キレイゴト/yumekyo
僕は真の言葉というのは
野山の木々に実っていて
母の田舎で無農薬露地栽培されていたトマトのように
強烈な匂いを持ち かじると甘いものだと思っていた
ところがどうも勝手が違ったようだ
僕が本当の言葉だと思い込んだものは猛毒であるか
使いどころに困る代物ばかり
真の言葉は何処にあるか
僕は途方にくれていた
いつの間にか十五に倍する年になり
僕にも部下や後輩が出来た
知的障碍を持つ方と一緒に働くことになった
彼女は昔のテレビ番組と芸能界の話題には人一倍詳しい
僕らが友人達と夜な夜な騒いでいる年頃
彼女はテレビを与えられてぽつねんと過ごして
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