赤鼠、白狐 ver. 2/mizu K
 
祭であった、参道はおろか出店までも圧されて、崩れ、わたしととなりの人の足がなんどか入れかわってしまって、もとにつけもどすのに相当難儀するほどの人の出で、空白がないので、いきもくるしい、樹齢数百年の古木がひきずり倒されている、木が倒されるとそこに、ぽっかりと穴ができる、そこから上空の湿気がじゅわっと降りてくる、それを浴びて、人々はすくすくと成長する、だがわれわれはもうすでに極相にたっしているのだ自重せよ、自重せよ、なくばわれわれは亡ぶ、ほろぶ、転がるように、ほろぶ、そういう題のビラをまいている男がいる、男は懸命に声をからしビラを人々の鼻先につきだすが人々は雨の心配ばかりしててんでにあらぬ曇天をながめ
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