踊り子トマト/魚屋スイソ
 
きた女の口へそれを押し付ける。見開かれていた女の目に潰れたトマトの中身が飛び散る。女は首を振りながらも、必死に相槌を打つようにしてトマトを飲み込もうとするが、そのほとんどが胸の上か浴槽へと吐き出される。それは構わなかった。この後この女は、浴槽の底を舐めずってトマトの残骸をかき集めることになるのだから。煙草の火を消し、その様子を眺めながら再び袋の中に手を入れて反応を伺う。呼吸を荒らげこそしているものの、声らしい声を発さないことに感心したおれはまだ欲しいかと訊ね、やや小さめのトマトのヘタを摘まんで女に見せる。真っ白い肌が紅潮したように濡れている。
 女を浴槽の縁へ座らせ、足枷を外してやる。足首は黒ず
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