「名」馬列伝(16) サイコーキララ/角田寿星
 
黒鹿毛の馬体は、輝いていた…
いや、輝いていてほしかった。
元来カリカリしやすい性質の彼女は、パドックでややイレ込んでいるようだった。
さらに鞍上の不安。そう、一流といえない成績の石山騎手は、G1レースの騎乗自体、初めてである。しかも阪神芝1600mは6年目にして未勝利で、2着に来たことさえなかった。
それでも単勝1.8倍の、圧倒的な1番人気。2番人気のレディミューズが6.7倍である。彼女への、そして石山騎手への期待は大きかった。
期待というより、あるいは願望のようなものか。
いったん苦汁をなめた騎手と、一流血統ではない素質ある牝馬。ひとつのサクセスストーリーが現実となってほしい、そん
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