どこかの誰かへ/
 
たが読んでくれてもかまわない
そう言ってみたが
届けるのが私の仕事です
と言って背を向けると
すぐに見えなくなってしまった
きっと「どこか」へ行ってしまったのだろう


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深夜に言葉が部屋の中で泳ぎ始めて
自由形よろしく激しく音をたてている
泳ぎ疲れるまで待つのもいいが
生憎と明日は朝が早い
眠れない時間を楽しむのにも
適切なタイミングが必要だ
誰かに電話をかけて
生まれてくる言葉を片っ端からぶちまけたい
そんな衝動に駆られ
携帯電話を手に取るが
どんな番号も押すことができない
どこか から どこか まで
この小さな機器は数えきれない人と繋がって
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