響/刀
彼はとてつもない疾さでアスファルトの裂け目を駆け抜ける。
僕の腕はまるで引き抜かれた大根。
そろそろ肩が抜けるのではないかと思えるような痛みと、走る速さでかかる重力で血液が体の末端まで飛ばされる気だるさ。
ついさっき聞こえた咆哮は鳴り止まない。
後ろから前へと流れぬける景色はもちろん濃厚な霧ばかり。
“狩りが始まった”
腹の底から頭の奥まで、そして耳まで響き渡る言葉が全身を震わす。
“アイツらはオレの同族を狩り続けた”
中性的で、それでいて重圧のある低めの声が、全身を震わす。
“同族は皆住み場所を移動した”
初めての感覚に僕の心が震える。
それを感じ取ったのか、彼の低い笑い声
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