殺戮のスモウ取り/オノ
 


ロビーには静寂が現れた。
人々は震えるばかりで何も考えようとしなかった。
ただ中心に据えられた柱時計が、意味もなく時間を刻む音が響いた。
すると、暗闇を裂くように中年男性のヒステリックな声が聞こえた。
「おい、あんた、大丈夫か。血が出てるぞ。」
呼びかける男の声がだんだん上ずっていった。
「おい、死んでる!死んでるぞ!さっきまで生きてたのに!」
群集がパニックを起こすのには時間がかからなかった。
犯人がこの中にいるのだ。
武装した大学生たちがライトを持って出て行ったあと、
入れ替わりにロビーに入ってくるこのチャンスを待っていたのだ。
「落ち着け!怪しい奴がいたら取り押
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