夜ノ目/かいぶつ
 
落ち着いてくる
進むべき方向に
体が運ばれている心地になって安堵する
もう夜も深いだろう
ゆっくりと目をとじて行く

私は聞き慣れた車輪の音だけを聞いて
終着まで眠るはずだった
しかし低い唸りのような音だけが
鼓膜を延々と震わせ
私の速度感覚は
少しずつ崩れ落ちて行った

私を乗せる鉄の塊が
想像を遥かに超える
危険な速度に向かっているのではないか?
そう思えば思うほど
車体の軋む音が惨事への前触れのように聞こえて
不気味だった

恐怖に耐え切れず目を見開き
無意識に外の景色を見ようとしたが
そこは車窓の無い列車の中
あるのは白い壁と
そこに書かれた
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