走れ、走り続ける。/ブライアン
だ。
聖人ぶった連中の声。彼らは何にでも答えを出し、限界を示してやり、慎ましやかに進むべき道を説く。葬式の司会者のように
ジョルジュバタイユ「内的体験」
答えは出ている、限界がそこにはある、と納得してしまった。高校3年間、手にするはずだったものがするするといつの間にかなくなっていた。大学生になってはじめて気がついたのだ。手のひら。何もない。何をつかむのか。乾いた空気。湿気さえ充分にない。握り締めても何も残らない。走れ、走れ、と深いところから声がする。耳をふさいでもかすかに聞こえる。耳元で雑音をわめく。力の限りその声を消そうとする。自ら作った囲いの中から何を眺め
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