なかないいのち/ベンジャミン
 
 いのちだった

顔の大きさとはつりあわない大きな瞳で
常に自分よりも高いところを見つめて
希望や願いを唱えることもできないのに
ただただ上を見つめようとしていた

明日が形あるものならば見せてあげたい
そう思わせるような眼差しで
痛いくらいに僕を見ていた
そんな いのちだった

両手から伝わってくる熱が
夜がせまるようにうすれていって
やがてそれが僕の手のひらの温度と等しく
そう気づいた頃にはもう動かなくなっていた

一度もなくことのないままに
消えてしまった

僕の温度がゆっくりと伝わってゆくとき
僕は僕のいのちがあることに気づいて
叶わない願いをつ
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