なかないいのち/
ベンジャミン
をつぶやいてしまう
けれどもそこには
ただふたつの器しかなくて
それは大きさも何もかも等しいのに
まったく違う生き方をおさめたまま
僕はこんなに胸いっぱいになっているのに
どうして手のひらの中は
こんなにも軽いのだろう
忘れられない温もりだけを残して
なかないいのちは
いってしまった
けれどそれは
僕のどこかに保たれた熱となって
これからの僕とともに生きてゆく
たしかな いのちだった}
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