ピップの空/オノ
ピップの家に久しぶりの来客があった。
空が恋しくなった老人が、ピップの絵を買いたいと言うのだ。
ピップはその絵を安く譲った。
「ごめん下さい、空の絵が欲しいのですが。」
今度は上品な婦人が来て、空の絵を買っていった。
ピップの絵は飛ぶように売れ始めた。
そしてとうとう画商がピップの家にやってきて、ピップに
個展を開かないかと持ちかけてきた。
ピップは二つ返事で承諾した。
「ピップの空展」は大盛況となり、ピップの絵は瞬く間に
売り切れてしまった。
「ピップ先生、もっと空の絵を描いてください。
今やあなたの絵はゴッホよりもピカソよりもモネよりも
シャガールよりもルノワールより
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)