ピップの空/オノ
 
よりも、価値のあるものなんですぞ」
ピップはニヤリと笑うと、画商にありったけの青の絵の具を
買ってこさせた。
そして今度は沢山のはしごを買わせて、はしごの上にはしごを
乗せるとさらにその上にはしごを乗せて、それを天まで繋げた。
ピップは青い絵の具を持ってそれに登っていった。
ピップは膜に空を描き始めた。
太陽、雲、渡り鳥、夕焼け、月、銀河。
ピップは空について知っている全てをそれにつぎ込んだ。
晴れた青空の好きなピップが一生をかけて描いた、太陽の二つある
その空は、いつまでも人々の本当の空として、頭上をぐるぐると
回り続けるのだった。
戻る   Point(3)