嘔吐/乱太郎
ーツアルトを聴こう。
「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。夜明
けまでは、まだ時間がありそうだ。
/靴音の笑い転がる音が。下弦の月を浚っ
ていくかのように。/
雷鳴が聞こえる。一瞬天使が窓に立ったよう
な。いや錯覚に決まっている。もう神も悪魔
も古典に過ぎない。誰かのヘッドライトのい
たずらだろう。サルトルの自由すら手にする
こともなかったが・・・。砂のようだ。僕は
砂になろうとしている。人の掌から零れ落ち
る無数の孤独に。聞こえているか。たったひ
とつの擦れた音を。
/hの狂った音が。不格好な溜息だけが
原子核
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