今はもう、いない/番田 
 
板を見た
よだれを流しそうな 自分がいる
定期券を取り出して 見つめている
それは 緑色のカードだった


紙芝居を見させられているような気がした
風がぼんやりと吹いていた
いろいろな思いがあてがわれているのかもしれなかった
私は何も語ることもないであろう
暖房がほえている
透明である空間の中を時が静かに流れていく



私がどこにいるのかも理解できはしなかった
私は 言葉もなくしていた
キッチンのドアを押した


ぼんやりと 食パンをかじっていた
今日は 昨日と 違う味がする
少し辛いような気もする


私は 自分が人であることを疑っている

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