ぼくに手紙を/オイタル
 
だれかぼくに
長い手紙をくれまいか

すっぽり暗いすり鉢の空の底
吹雪のあけた だだっぴろい広場に
まんべんなく雪は敷き詰められて
だれかが夕暮れの紅いろうそくを吹き消す
すると
取り落とした白いビニール袋や
首をすくめるダウンジャケット
得体の知れない足跡や足踏みなんかが
狭い歩道をいっせいに運ばれてくるんだ

そんなとき
だれか どうかぼくに
長い手紙をくれまいか
中身なんて こんにちはとさようなら
それだけで分厚く封筒をはみ出す
役立たずの長い手紙をくれまいか

歩道の行き着く先にある
ぼくの町のいちばん大きな郵便局は
市役所のななめ向かいに立ちひ
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