機械にまつわる夜の話/かいぶつ
機械を買った。
何の役にも立たない機械
球体を半分に切った形の
透明なガラスケースの中に
小さな羽根のついたモーターと
豆電球だけが配線され
丁寧にハンダ付けされた
小さな機械
特別な意味もなく
立ち寄った上野のリサイクルショップで
適当な値段の付けられた
それを手に取り眺めつつ
せっかく上野に来たのだから
何かひとつ、土産でも買って帰らなければ
いけないような気がして
何も聞かずに会計を済ませた
まったくもって甲斐のない買物だったし
それをわざわざ妻に話す理由もなく
飾りにもならないデザインなので
その日の内に窓辺に置かれた熱帯魚の水槽の中へ
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