入れ物/アンテ
ぼくは病院から出ることすらできない
そう自分に言いきかせていれば
諦めることも平気だった
ヒナコちゃんが両親と帰ったあとも
ロビーのベンチに座って
独りでぼんやりさせてもらった
土曜日の受付は閉まったままだ
点滴をしたパジャマ姿の男の子を囲んで
談笑する家族が一組
痩せた少女がすわった車椅子が
一般病棟のエレベータから出てきて
勢いよく走り出したかと思うと
ぼくの前でとまった
少女は幼稚園か小学校の低学年くらいで
どこか違うところをぼんやり見ている
突然くるっと車椅子が回転して
押している女の子の
おかっぱの髪がゆれて
ワンピースの裾が広がって
またお
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