永遠に溶けない雪/結城 森士
 
雪だるまが溶けていくのを見て悲しんでいる
薄汚れた雪を集めては雪だるまを修復し
もはや顔の原型など留めていないのに
雪だるまさんが可哀想だと
涙を浮かべながら

やがて陽の日差しに溶けていくのだ
あの健気にみえる小さな子供の心さえ

分かっていないんだ
原始的な偶像崇拝行動だ

きみが涙を流している
けれどそれはただの塩水に過ぎない
きみも分かっているはずだ
感情的な行動は意味を持たないことを
ただ溶けていくしかないということを

なのにあの子供は
雪だるまを修復し続けている
泣きながら何度でも何度でも
固体が液体に融解していく
それだけのはずなのに

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