バースキャナル/望月 ゆき
ってわたしは、部屋で溺れた。
/四角い天井を、観測しながら、皮膚をつたって沁みこむ、見たことのない誰かの体温を感じていた。ずっと、ぼくを内包していた、温かい水の主の、手のひら。低く、ひとつだけ発した声が、白い天井にエコーしてそれから、気化した。放たれたならば、それはもう、一部ではなくなる。壁の外では、夏が、一気に速度を増し、ゆうべ羽化したばかりのあぶら蝉の、まだ柔らかいからだを、融かしている。そういえば手の主は、ぼくの性器を、確認しただろうか、
/学校に通うことが、必然ではないような気がしていて、さしずめ、今この瞬間、わたしの目標といえば、限りなく正確で、狂いのない円を描く
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