金木犀と綿が舞うような/01
」
また聞こえてくる吐息。笑い声を煙草の白い煙に変える、短い吐息。
「そいつの代わりには雪虫がいるんだよ!」
まただ。また、子供のような憎まれ口をたたいてしまった。
僕はこのように幼稚な心を持っている。それは胸の中のあちこちへと転がり、ある時には蝶が舞うようにふわふわと飛んでいき、ある時には飛行中に銃に撃たれた鳥のように、地面へと真っ逆さまに落ちていく。自分でさえも、それを手のひらで操ることができなかった。それに比べて彼の心は、低重心で、ころころと何処かへ転がったり、見失うほど空高く飛んでいったり、底の無い闇へ吸い込まれる事は無く、いつも同じ場所で、ひっそりと存在しているようだった。
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