金木犀と綿が舞うような/01
無いの?金木犀。」
「うーん……どうだろう。ちょっと待って、調べてみる。」
携帯電話を耳に当てたまま、本が何処かの国の軍隊のように並べられている棚の前へ移動する。そこから埃まみれの植物図鑑を取り出し、キンモクセイの項目を探す。
その項目に掲載されている写真は、小さくて可愛らしい、橙色の花が咲いている木だった。白いワンピースを着た、幼い女の子の髪飾りに似合いそうな花。
彼の言っていたことは本当なんだと思いながら、生息地を確認する。
「……うーん……寒いところにはない、って……。」
「お前の住んでる場所って、あの黒くて気持ち悪いカサカサ動く奴が少ない代わりにそういうのが無いのな。」
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