ある徘徊譚/リンネ
ことに気がついて驚いた。しかし、友人のAはすでにここがどこかわかっているようで、
「一時間半くらいはかかるな」
「遠いね」
「バスでいけばいい」
「四十分はかかるよ」
「ほんとうに?」
「わからない、ここはどこだろう」
「やっぱり、ちょっと間に合いそうにないよ」
駅の中にはショッピングセンターがあって、服や惣菜やテレビゲームなどの店舗が並んでいる。運よく本屋もあったので、いい地図がないか探してみることにした。手当たりしだいの地図を広げて品定めをしていたら、このあたりの地形が詳細に描かれたものを見つけた。自分は驚くほど嬉々としてそれをつかみ、レジのあるほうへ向かっていく。しか
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