ある徘徊譚/リンネ
 
から電話がかかってきたのは、ちょうどそのときである。

「ああ、ちょっと間に合いそうにないよ」
「それは残念だね」
「ほんとうに?」
「ここはどこだろう」
「わからない、もしかしたら、間違えたのかもしれない」
「バスをかい? 残念だね」

話しながら歩いていたら、いつのまにか大きな駅の前にきている。近くにとても大きな路線図の看板が掲示されていて、とりあえず自分が今どこにいるのかを確認してみる。東京だということはわかるが、位置がはっきりしない。どこに書いてあるのだろうか、駅名が見つからないのである。何度も線路を目で追っていくが、何回目かで、そもそもこの駅の名前がわからないということ
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