ある徘徊譚/リンネ
停留所に降りると、あらゆる方向に森が広がっており、途方に暮れてしまった。バス停のポールがくるくると回転していて、何が書いてあるのかまったくわからない。仕方がないので、しばらく木々の隙間を抜けて歩いて行くと、とつぜん視界がひらけて、神社とバスターミナルが現れた。神社はとても長い階段の上にある。どうもそれを登る気にはならなかったので、自分はバスターミナルのほうへ向かった。制服を着た人が二三人いたが、どうしてだろうか、そばに行くと、わッ、と言って近くに掘られた洞窟の中に逃げていってしまった。自分が避けられているのかと思い、しかしその理由がまったくわからず、しばらく一歩も動けないままでいた。友人のAから
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