ガラス水槽の中にて/01
 
、その顔だけとても見慣れていて、とても安堵した。

「この海は危ないよ。」

波に飲み込まれたら、またひとりぼっちになっちゃうから、そうなる前に声をかけてみる。
その顔は無表情で答える。

「どうして?」
「海がとても荒れているからだよ。」
「それはゆめだよ。」
「だって、水しぶきが顔にかかったとき、すごく冷たかったんだよ。だからゆめじゃないよ。ゆめだったらもう目が覚めているはずだよ。」
「じゃあ、腐っているんだね。」
「なにが?」
「貴方の目と、頭の中。」

顔がゆらゆらと揺れている。その向こう側でガラスの破片が泳いでいる。

「そんなことないよ。」
「私は波
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