十一月の童話/salco
忘れた故郷に
恥じる心と壊した体で帰り着いた時には
すっかり老けた妻と見違えるような子供達の非難と憎悪が迎え
そうしてとうに食卓の席は
酒浸りの自分の座れる場所ではなかったと
浮浪者は言って
あたり前だよなあ、と笑いました
そうして真っ黒な手で懐を探り
とうに用無しの財布から
擦り切れた一葉の写真を宝石のように取り出すと
自慢げに一人一人を指差して
少女に名前と年を教えたのでした
この夕暮れの同じ空の下のどこかでは今頃
小さな子供が明日から眠るベッドを想い
初老の夫婦が明るい電燈の下
穏やかに談笑しているのだろう
二人は家族のように手をつないで国道沿いを歩い
[次のページ]
戻る 編 削 Point(16)