十一月の童話/salco
 
風に舞う新聞紙を捕まえて来て
少女に上着をこさえてくれました
少女は再び泣き出して
孤児院へは帰れない訳を
しゃっくりの中から途切れ途切れに話しました

就労したら出て行かねばならない決まりの
家へ入る為に
何十人もの見知らぬ子供達が一台の
落ち着いて眠れるベッドの空き待ちをしていて
本当は明日が初月給の貰える日であること
同時に路頭へ叩き出される日であることも話しました


街を出て国道沿いをとぼとぼと
長い影を引いて歩きながら
今度は浮浪者が
遠い故郷の話をしてくれました

鉄骨とコンクリートの間で働いて働いて
金を送り
いつしか都会の誘いに溺れて忘れ
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