十一月の童話/salco
 
者に会いました
レストランの裏口を一つ一つのゴミ箱漁り
空の酒瓶から滴を集め、食べかすの魚や肉や野菜屑を
一日の糧にして生きている

裏口で時々すすり泣いていた小さなウエイトレスを
この初老の浮浪者はよく憶えていました
鉛色の顔の中でどろんと黄色く光る目が覗き込んだ時は
ぎくりと身構えたものの
少女も歯の無いこのおじさんを
何となく憶えていたのでした

二人共、帰る場所などこの世に無いので
紅い旗袍(チーパオ)を着た痩せっぽちの少女と
ぼろと新聞紙を纏った男は親子のように寄り添って
夕陽の方へ歩いて行くことにしました

寒くないかね? 言うと浮浪者は
風に
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