見守る/寒雪
 


窓を閉めれば
肌を撫でる寒さは居留守を使われ
ガラスを通り抜けて
冷たくなった雰囲気を
盛り上げる穏やかな
秋の太陽に温まった教室


昨日までそばにいた
串刺しの的はもういない
いつでも背後から襲われる不安感を
心の奥底で作り出した
偽りの体温を抱え込んだ的に
ゆっくりと伝え
二人はいつでも降りかかる濁流を
清らかな流れに変えていく
毎日作り上げていった二人の要塞も
半分だけ空洞が目立つ
いつの間にか空っ風が通り過ぎて
懐の温もりがいつまでも
生ぬるいままで温まらないことに気付く


乳房の間に浮かんだ的を
夜の静寂に漂う青白い月に見立てて
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