反映/豊島ケイトウ
 
フを舐めておりました。
舐め方は実に豊富で、プロレタリア文学的に舐めたりディオニソス的に舐めたり芙蓉のように舐めたりマント狒々のように舐めたり華僑のように舐めたり角度を模索しながら舐めたり金魚をねめつけながら舐めたり花を愛でながら舐めたり逆立ちで自慰を行いながら舐めたり文机の下で舐めたり雨蛙の耳もとで舐めたり首を吊って舐めたり引き戸に挟まれたまま舐めたり足枷をはめたまま舐めたり、しました。

けれども男が一番熱心に舐めるのは、母屋の情事を覗き見ているときでした。

父は何ごとに対しても閉塞を嫌ったので、行為中ですね、ずっと雪見障子の小障子が上げられておりました――外部から丸見えだったので
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