バベル/リンネ
く、なかなか下に進まない。
ある階の踊り場で、そっと、手すり越しに下を覗いてみる。建物の外では、数人の男女が上を見上げて立ちつくしている。遥か下にいるはずなのに、なぜか顔の表情まで良く見える。彼らはこちらに気づくと、大げさに手を振りはじめた。私はどうやら、彼らに待たれているらしかった。「マタレテイル」と私は言ってみた。何か違和感のあるものが、咽喉のあたりから外に浮かび上がるようで、心地よかった。
――マタレテイル」「マタレテイル」「マタレテイル」
また、空が息を吹きかけてきて、私はしかたなく階段を下りはじめた。下りながらも、「マタレテイル」をつぶやき続けている――
気がつけ
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