コメディ / ****'04/小野 一縷
昇る
冷たい羊歯の上に 重油のような血が 熱く零れる
二筋の捻れた煙を解きに 血の黒い匂いが 温い風に乗ってくる
清らかな白い石が 柔らかく黒い泥の中に
幾つも 静かに 眠っている
暗闇を漕いでゆくバイオスの小船は
銀の梢から零れる 不吉な徴の光を六つ
行きつ 戻りつ 一つずつ 運んでゆく
遥かな透明の奥 遠い湖底に静かに
青銅のアルテミスが 常しえに隠されている
彼女の胎児は 冷たく暗い羊水に浸かったまま
誕生の夢を 醒めたまま 見続けている
男と女 性の隔たりの狭間に置かれた天秤
永遠に均等な その揺らぎに乗って
昏睡に陥っ
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