コメディ / ****'04/小野 一縷
 
が 日照りに蒸発する臭い 
彼は今 その臭いを嗅ぎながら 異国の道端に平伏して 
泥水を咽を鳴らして飲んでいる まだ温かいメルネポネの骸の足元で


湿っている 
猛禽類ですら遠ざかる 青い暗さの中に
致死量の毒を孕んだ憂愁が 薄く暗い焔のように 立ち昇る


陽を浴びれないまま ずっと生かされている影の樹は 
その輪郭に冷たく沿って しっとりと湿った腐葉土に 腐れ落ちる
タルタロスへの門が その波紋の広がりに沿って 黒赤色に 口開く


七種類の土気色の病が流れる アケローンが氾濫して
ハデスが眠る石棺の 苔むして濡れ滑る石蓋を押し流す
暗く重い澱み 厳かな暗黒
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